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スーパービンテージのリペア Lee 31 カバーオール
福岡 上人橋通りの古着屋、アウラ・クロージング&アンティークスです。

こんにちは!発信はスタッフに任せきりで。。数年ぶりのブログ更新になりますオーナーの西岡です。
年末にやらせていただいたLee 31カバーオールのリペアをご紹介したいと思います。

ご依頼主さまは2012年のブログでご紹介したストロングホールドカバーオールのオーナー様で、今回またスーパービンテージをご依頼いただきました。

かなりの大手術で全力で取り組みましたので、その様子を時事系列でご紹介させていただきます。写真の解説をその下に書いていきます、大変長いブログとなりますがお付き合いいただけたら幸いです。

今回のご依頼はこちら
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1930〜40年代あたりのLeeの廉価版である31のカバーオールです。廉価版と言ったもののさすがUNION MADEのLee、しっかりとした造りでマイナーブランドのような粗末な造りとは違います。
フロントは両袖とメインポケット付近に集中的なダメージがあるり、細かいダメージも点々と散らばっています。


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バックは左肩から裾まで縦に大きく裂けていて,右裾には薬品で劣化したようなシブキ状の穴が広範囲にあります。


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左半身を見てみると脇の縫い目の両側がとても大きく裂けていて、フロント側は複雑に、バック側は肩からアームホールに沿うように裂けて裾まで達しているのが分かります。とても致命的なダメージに感じるかもしれませんが、今回のリペアの1番の難関はここではありません。

1番の難関であり、失敗すると1番イビツな仕上がりになってしまう場所は…

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袖口のダメージです。両袖ともに千切れそうなくらい複雑に破けています。
良いメーカーの作品になるほど袖口の造りは複雑になっています。細い筒状に2枚の生地が巻き縫いで縫い合わせてあり、カフス布はまた違った剥ぎ目で縫い合わせてあって内側に同寸で付けられています。開き止まりのカンヌキもあり、また 解くのが不可能なボタンやボタンホールがあります。これらの問題をクリアする視点でダメージをよく見て最善の直し方を決めリペアし、更に2枚の袖生地の寸法も 袖布とカフスとの寸法もピッタリと合わせなければイビツで不恰好な仕上がりになってしまいます。

まずは形をきれいに整えて現状を理解します。

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縦横の地の目を守り整えてみました。
幸い2枚のうち片方の袖生地が千切れずに繋がっているのは超ラッキーです。千切れていれば袖布の寸法は予想で決めなければいけませんが、首の皮一枚でも繋がっていれば正解な寸法が分かります。片方が分かれば他方を同寸で仕上げれば寸法を合わせる事が出来ます。

整えて見た感じ少しは欠損している部分もありますが、大きな欠損はないようです。

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欠損もさほど無く、寸法も把握できるのでイケると判断し治し方を決めました。全てのパーツをバラして単独でリペアして、またキレイに元通りに戻したいと思います。大変さは伴いますが1番自然で美しい方法でチャレンジします。少し惜しい気がしますが、より良い仕上がりの為に開き止まりのカンヌキは解いていよいよ作業開始です。


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右袖から始めます。まずはボタンホール側の袖布から。ボタン側の袖布から仕上がりの長さをとり接着芯の当て布をしました。生地が欠損している部分はステッチングで生地を造ります。ライトオンスのデニムで繊細な仕上がりを目指したいので糸はシャッペスパンの太さ#60番手で、色落ちしているこの部分は色番134を使って叩き縫いします。

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片方だけ叩きました。写真が多くなるので省きましたが、カフスの見返し布も必要最小限で解いていて袖布単体での叩き縫いです。欠損していた縫い代部分は縫い縮みで寸法が変わってしまわないように注意しながらステッチングで生地を造りました。


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次にボタン側です。まずカフス布を解いて袖先からリペアします。

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取れないタックボタン付近はやむ無く手付かずになりましたが、袖先のリペアを袖布とカフス布それぞれ叩きました。
その後に生地が欠損していない部分を治していきます。

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欠損してない部分を治すと残るは欠損部分です。ここもさほど広範囲ではないので、ステッチングで生地を造ることにします。

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右袖の叩き縫いは完了です。あとはステッチを入れて元に戻せば完了ですが、ステッチ入れは最後にまとめて行います。

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続いて左袖です。

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右袖と同じく袖布もカフス布もバラしてそれぞれ単体で治していきます。

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それぞれ叩きました。こちらの袖ボタンは欠損していたので躊躇なくバラして治すことが出来ました。
ひとまず袖は叩き縫い工程の完了です。

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いちばん派手にダメージがある身頃部分に取り掛かります。派手にイッていますが、欠損部分は少ないように感じます。

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まずダメージでは無く、ただのステッチの解れである肩を修理します。

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肩の解れを三つ巻きで元に戻しました。これで純粋にダメージ部分だけの状態が把握できます。

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やはり線状の裂けであり、欠損部分はさほど無いようです。まず後ろ身頃の長い裂けから治していきます。

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あんなに派手だったダメージも整えると細い線状になりました。ごく小さい欠損が2か所ある程度です。
しかしながら肩のから裾までの長い距離です、叩き縫いの際にズレてくると不自然なシワの原因になったりネジレが出たり片肩にズレてしまったりといった惨事が待っています。

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絶対にズラさない為にもマスキングテープで目貼りしました。上の方から縫う分だけ少しずつ剥がしながら慎重に叩いていきます。

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縫いました。つっ張りもネジレもなく上手くいきました。下の方は色落ちのトーンが違うので別の色の糸に替えてからリペアします。

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下の方は濃いトーンに合わせてこの糸で縫うとして、まず今使っている淡いトーンの部分のダメージから治していきます。

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今度は先ほどの隣の前身頃側をやっていきます。ポケットを剥がして傷の状態を把握します。
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こちらも少しイビツですが線状と鉤形の合わさったダメージで、ピッタリと合わせる事ができる傷でした。
ズレないように慎重に叩いていきます。

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叩きました。上の方は薄いトーンで。糸の色を替えて濃いトーンで下の部分も叩きました。

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最後に裾付近を残すだけとなりました。ここは裾の三つ折りを解いて治していきます。

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三つ折りを解いて…

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叩き縫いしました。リステッチは後ほど。

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こちらは右側のメインポケットです。が、ポケット部分がそっくり切り取られています。
この部分も生地を持ってきて復元出来なくは無いですが、仮に近い色目と風合いの生地があったとしてもアタリや補強布の縮み具合による絶妙な雰囲気は再現不可能であり、取ってつけたような悲しい仕上がりになるのが目に見えて解りますので、ここは潔くこのままにしておく方が結果的に格好良いと判断しました。
身頃の小さなダメージだけ塞いでポケット自体はこのままにしておきます。

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次は右前身頃の裾付近と、フロントボタン欠損によるダメージです。バラすと地味に大変な場所です。。形を整えて一緒に叩くか悩みましたが、バラしてより美しい仕上がりに挑戦することにしました。

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裏側の見返し部分の状態です。
失敗するとボテっと不恰好な仕上がりになるケースも予想されるので慎重に…

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バラして形を整えて当て布をしました。

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縫い代が小さい上にダメージがイビツなので念のために大きめに当て布をして、もしもの時は縫い代としても使えるようにしました。

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身頃と見返しそれぞれ叩きました。後ほどステッチを入れて完成させます。
ボタン欠損部分のダメージは、チェンジボタンを取り付ける事を想定してちょっとした工夫を施してあります。

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後ろ身頃裾付近の広範囲のダメージです。バッテリー液や強い漂白剤を浴びたようなシブキ状のダメージです。ここも三つ折りを解いて叩きます。

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叩きました。まだキズが薄っすら見える状態ではありますが、せっかくのインディゴデニムの風合いが叩きステッチで消えてしまわないように充分な強度が出た状態で止めました。

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左前中心付近の小さなダメージです。幸いボタンホールとの距離が充分あるので、見返しを剥がして単体でリペアできます。

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見返しを開いて当て布をしました。

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叩き縫いできました。
これで叩き縫いする工程は全ての場所で完了です。
型を整えてステッチ入れをすればいよいよ完成です。

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ステッチ糸には色番275にしました。白の綿糸が経年の汚れなどで変色した色にこれが1番近い色目でした。太さも違ったものが使われていたので忠実な再現に近づける為に#60と#30の2つの太さを用意しました。これでステッチを入れていきます。

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開いたところを元々のステッチ跡に沿って慎重に戻していきます。

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完了しました。カフスの部分です。

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カフス開き見せのすぐ上の部分です。忠実に三つ巻きで戻しました。この部分が1番難しいハードルだったかもしれません。何度やっても袖の三つ巻きステッチは大きなストレスを感じる部分です。

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その内側です。三つ巻きで尚且つ元のステッチの上に落とすのは至難の技で2度ほどやり直ししました。

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ポケットも戻しました。

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激しかった左脇の裾部分のリステッチです。

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裾の裏側は黒綿糸だったので墨黒の糸に替えて再現しました。

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後ろ身頃の裾部分のリステッチ。

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こちらも内側は墨黒の糸で。

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前中心の裾部分です。恐れていたボテっとした感じも出ずに上手くいきました。

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裏側もコバステッチも落ちることなく成功しました。

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こちらは欠損した第5フロントボタン部分です。
普通に縫い付けるボタンやタックボタンはもちろんですが、チェンジボタンを取り付ける場合を想定して他の部分と治し方を変えています。キリや細いドライバーなどで小さな穴を開ければチェンジボタンホールとして活用できるようにしました。

これで全ての工程が完了しました。
店の営業もしながらではありますが、完成までに延べ5日間を要しました。しかしながら心地よい達成感を得ることが出来ました。

自然光で完成後のリペアをご覧ください。

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これで元気になりました!まだまだ長〜く愛用していただけます。やりはしないでしょうが、洗濯機で強く洗っても大丈夫なレベルです。

このような価値あるデニムをAURA repairにご依頼いただき誠に有難うございます。良い経験をさせていただきました。またのご依頼をお待ちしております。


お問い合わせは AURA Clothing & Antiques 092-716-1920 

by auraclt | 2021-01-12 12:30 | リペア | Comments(0)
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